【2023年最新】個人の研修・スキルアップの実施有無、受講時間の調査結果
厚生労働省は、2023年6月30日に「令和4年度 能力開発基本調査」の結果を公表しました。
能力開発基本調査は、企業・事業所と労働者の能力開発の実態を明らかにし、今後の人材育成施策の在り方を検討するための基礎資料とすることを目的に実施している統計調査です。
本記事では能力開発基本調査を基に、企業に所属する個人の能力やスキルアップにつながる行動の実施有無、かける時間や意識について紹介しています。
※研修支援=OFF-JT支援、スキルアップ支援=自己啓発支援と表記
個人の能力・スキルについて
自信のある能力・スキル
仕事をする上で自信のある能力・スキルがあると回答した割合は、労働者全体で85.8%であり、正社員では90.4%、正社員以外では77.5%となっている。
自信のある能力・スキルがあるとした者
出典「能能力開発基本調査」
自信のある能力・スキルの内容については、「チームワーク、協調性・周囲との協働力」が最も多く、正社員で52.6%、正社員以外で57.4%となっている。
次いで「定型的な事務・業務を効率的にこなすスキル」(正社員37.5%、正社員以外39.3%)が多くなっている。
また、最も少ない回答は、正社員では「語学(外国語)力」(2.9%)、正社員以外では「専門的なITの知識・能力(システム開発・運用、プログラミング等)」(1.3%)となっている。
自信のある能力・スキルの内容
出典「能能力開発基本調査」
向上させたい能力・スキル
向上させたい能力・スキルがあると回答した割合は、労働者全体で91.4%であり、正社員では95.9%、正社員以外では83.2%となっている。
向上させたい能力・スキルがあるとした者
出典「能能力開発基本調査」
向上させたい能力・スキルの内容については、正社員では「マネジメント能力・リーダーシップ」が41.6%と最多となっているが、正社員以外では15.5%と、大きな差がみられる。正社員では、次いで、「課題解決スキル(分析・思考・創造力等)」(35.3%)、「ITを使いこなす一般的な知識・能力(OA・事務機器操作(オフィスソフトウェア操作など))」(33.1%)が続いている。
正社員以外では「ITを使いこなす一般的な知識・能力(OA・事務機器操作(オフィスソフトウェア操作など))」(36.9%)が最も多く、次いで、「コミュニケーション能力・説得力」(28.2%)となっている。
また、「読み書き・計算等の基礎的素養」が最も少なく、正社員が3.4%、正社員以外が7.9%となっている。
向上させたい能力・スキルの内容
出典「能能力開発基本調査」
会社を通して受講した教育訓練について
OFF-JTの受講状況
令和3年度にOFF-JTを受講した「労働者全体」の割合は33.3%であり、「正社員」では42.3%、「正社員以外」では17.1%と、正社員以外の受講率が低くなっている。
OFF-JTを受講した者
出典「能能力開発基本調査」
男女別に受講率をみると、「男性」の40.4%に対し、「女性」は25.3%と、女性の受講率が低くなっている。
OFF-JTを受講した者(性別)
出典「能能力開発基本調査」
最終学歴別では、「大学(文系)」(42.4%)、「大学(理系)」(41.1%)、「大学院(文系)」(41.1%)、「大学院(理系)」(54.7%)と、大学卒以上の最終学歴の者の受講率が高く、特に「大学院(理系)」では5割以上となっている。
OFF-JTを受講した者(学歴別)
出典「能能力開発基本調査」
年齢別にみると、20歳以上では、「20~29歳」(42.6%)、「30~39歳」(35.1%)、「40~49歳」(33.3%)、「50~59歳」(30.9%)、「60歳以上」(23.0%)と、年齢が高くなるほど受講率が低くなっている。
OFF-JTを受講した者(年齢別)
出典「能能力開発基本調査」
産業別に受講率をみると、正社員では、「電気・ガス・熱供給・水道業」(62.0%)、「金融業,保険業」(58.2%)で高く、一方で、「宿泊業,飲食サービス業」(22.9%)、「生活関連サービス業,娯楽業」(23.1%)で低くなっている。正社員以外では、「サービス業(他に分類されないもの)」(30.5%)、「情報通信業」(30.4%)で3割を超える受講率となっており、最も受講率が低いのは、「宿泊業,飲食サービス業」の6.5%となっている。
OFF-JTを受講した者(産業別)
出典「能能力開発基本調査」
企業規模別の受講率では、正社員では、「100~299人」で41.9%、「300~999人」で40.7%、「1,000人以上」で50.8%と、規模が大きい企業での受講率が高い。
一方で、正社員以外では、「30~49人」(10.3%)、「50~99人」(14.4%)、「100~299人」(19.2%)、「300~999人」(20.5%)、「1,000人以上」(17.2%)と、企業規模による大きな差はみられない。
OFF-JTを受講した者(企業規模別)
出典「能能力開発基本調査」
OFF-JTを受講した者の延べ受講時間
令和3年度にOFF-JTを受講した者の延べ受講時間では、労働者全体でみると、「5時間未満」が24.1%、「5時間以上10時間未満」が27.0%と、10時間未満の者が全体の2分の1を占めている。
正社員と正社員以外を比較すると、「5時間未満」の割合については、正社員の19.7%に対して正社員以外では44.1%と、大きな差がみられる。
また、正社員以外については、10時間未満の者が7割近くを占めている。
受講した者の延べ受講時間
出典「能能力開発基本調査」
平均延べ受講時間でみると、労働者全体では19.5時間であり、正社員(21.3時間)に対して正社員以外(11.5時間)が少なくなっている。
平均延べ受講時間
出典「能能力開発基本調査」
男女別にみると、「男性」(21.7時間)に比べ、「女性」(15.5時間)が少なくなっている。
平均延べ受講時間(性別)
出典「能能力開発基本調査」
最終学歴別では、「大学(文系)」(21.1時間)、「大学(理系)」(25.4時間)、「大学院(文系)」(21.4時間)、「大学院(理系)」(26.3時間)で20時間を上回っている。
平均延べ受講時間(学歴別)
出典「能能力開発基本調査」
年齢別にみると、「20歳未満」(36.9時間)、「20~29歳」(29.6時間)、「30~39歳」(21.7時間)、「40~49歳」(16.2時間)、「50~59歳」(14.3時間)、「60歳以上」(11.3時間)と、年齢階級が高くなるほど受講時間が少なくなっている。
平均延べ受講時間(年齢別)
出典「能能力開発基本調査」
受講したOFF-JTの役立ち度
受講したOFF-JTの役立ち度をみると、正社員では「役に立った」が46.9%、「どちらかというと役に立った」が46.6%であり、肯定的意見(93.5%)が多くを占めている。
正社員以外についても「役に立った」が48.7%、「どちらかというと役に立った」が46.4%と、肯定的意見(95.1%)が多くを占めている。
受講したOFF-JTの役立ち度
出典「能能力開発基本調査」
自己啓発について
自己啓発の実施状況
令和3年度に自己啓発を行った者は、「労働者全体」では34.7%であり、「正社員」で44.1%、「正社員以外」で17.5%と、正社員以外の実施率が低くなっている。
自己啓発を行った者
出典「能能力開発基本調査」
男女別にみると、「男性」は40.9%、「女性」は27.6%と、女性の実施率が低くなっている。
自己啓発を行った者(性別)
出典「能能力開発基本調査」
最終学歴別では、「中学・高等学校・中等教育学校」(22.1%)、「専修学校・短大・高専」(28.1%)、「大学(文系)」(48.4%)、「大学(理系)」(51.7%)、「大学院(文系)」(50.8%)、「大学院(理系)」(74.8%)と、特に「大学院(理系)」での実施率が高くなっている。
自己啓発を行った者(学歴別)
出典「能能力開発基本調査」
年齢別にみると、20歳以上では、「20~29歳」(41.7%)、「30~39歳」(41.6%)、「40~49歳」(35.1%)、「50~59歳」(29.1%)、「60歳以上」(23.1%)と、年齢階級が高くなるほど実施率が低くなっている。
自己啓発を行った者(年齢別)
出典「能能力開発基本調査」
産業別にみると、正社員では、「金融業,保険業」(78.8%)で最も高く、「生活関連サービス業,娯楽業」(26.7%)で最も低くなっている。
正社員以外では、最も高い「金融業,保険業」(33.4%)でも3割であり、最も低い「複合サービス事業」では9.2%となった。
自己啓発を行った者(産業別)
出典「能能力開発基本調査」
自己啓発の実施方法
自己啓発の実施方法は、正社員では「eラーニング(インターネット)による学習」を挙げる者の割合が44.8%で最も高く、次いで、「ラジオ、テレビ、専門書等による自学、自習」(39.1%)、「社内の自主的な勉強会、研究会への参加」(21.7%)、「社外の勉強会、研究会への参加」(20.1%)、「通信教育の受講」(18.5%)が続いている。
正社員以外においても、「eラーニング(インターネット)による学習」(36.4%)を挙げる割合が最も高く、以下、正社員と同様に、「ラジオ、テレビ、専門書等による自学、自習」(32.9%)、「社内の自主的な勉強会、研究会への参加」(19.9%)が続いている。
自己啓発の実施方法
出典「能能力開発基本調査」
自己啓発を行った者の延べ実施時間
令和3年度に自己啓発を行った者の延べ実施時間では、労働者全体でみると、「5時間未満」が13.9%、「5時間以上10時間未満」が17.3%、「10時間以上20時間未満」が17.7%と、20時間未満の者が全体の半数近くを占めている。正社員と正社員以外を比較すると、「5時間未満」の割合は、「正社員」(11.4%)に対して「正社員以外」(25.4%)で高くなっている。
自己啓発を行った者の延べ実施時間
出典「能能力開発基本調査」
自己啓発を行った者の平均延べ自己啓発実施時間をみると、「全体」では41.1時間であり、「正社員」の42.9時間に対して、「正社員以外」は32.8時間と少なくなっている。
自己啓発を行った者の平均延べ実施時間
出典「能能力開発基本調査」
男女別に見ると「男性」は43.8時間、「女性」は36.5時間と、女性が少なくなっている。
自己啓発を行った者の平均延べ実施時間(性別)
出典「能能力開発基本調査」
最終学歴別にみると、「中学・高等学校・中等教育学校」(30.2時間)、「専修学校・短大・高専」(32.3時間)、「大学(文系)」(46.3時間)、「大学(理系)」(49.9時間)、「大学院(文系)」(47.6時間)、「大学院(理系)」(55.5時間)と、大学卒以上がより多く、その中で「大学院(理系)」が最多となっている。
自己啓発を行った者の平均延べ実施時間(学歴別)
出典「能能力開発基本調査」
年齢別では、「20~29歳」(44.8時間)、「30~39歳」(45.4時間)、「40~49歳」(40.2時間)、「50~59歳」(36.1時間)、「60歳以上」(33.4時間)と、20代、30代で多くなっている。
自己啓発を行った者の平均延べ実施時間(年齢別)
出典「能能力開発基本調査」
個人として自信のある能力・スキルが何かしらあると認識している人は多数おり、さらに新たな能力やスキルを取得したいという意向も強いことがわかる。特にマネジメント能力・リーダーシップ、課題解決スキル、IT活用などのスキルを取得したいと考えている人が多かった。
一方でOFF-JTの受講や自己啓発の実施が出来た人は全体の半数にとどまり「学びたいが何かしらの理由で学ぶことができない」という状況があると考えら、解決すべき課題と言える。
令和4年度「能力開発基本調査」の結果詳細はこちらから
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00127.html
ATARAYOは企業・事業所・労働者の学びの実態と課題を明らかにし、
解決につながる企業の研修コンテンツ支援、社会人のリカレント・リスキリング支援を行なっています。
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OFF-JTとは
Off-the-Job Trainingの略で、職場外での研修や教育を意味します。OFF-JTは、OJT(On-the-Job Training)とは異なり、職場内では学ぶことができない知識やスキルを身につけることを目的としています。OFF-JTの具体的な内容は、資格取得講座、語学研修、ビジネススキル研修など多岐にわたり、従業員の能力開発やスキルアップに効果的であり、企業の競争力強化につながる重要な施策です。
自己啓発支援とは
とは、企業が従業員の自己啓発を支援するための制度や施策のことです。
目的は、従業員の能力開発やスキルアップを図り、企業の競争力強化につなげることです。
具体的な内容は、企業によってさまざまですが書籍やセミナーの費用補助、資格取得費用の補助、研修や講座の受講費用の補助、メンター制度導入などが挙げられます。