CASE STUDY

【2023年】急速に進む自治体のAI導入・活用状況

総務省が2023年9月に発表した「地方自治体におけるAI・RPA活用促進」によると、全国の自治体のうち、AIを1業務でも導入している自治体の割合は、都道府県・指定都市で100%、その他の市区町村は45%となり、実証中、導入予定、導入検討中を含めるとおよそ69%がAIの導入に向けて取り組んでいる状況です。

出典「自治体におけるAI・RPA活用促進」

 

本記事では急速に進む自治体のAI活用、導入状況について紹介しています。

 

自治体がAI導入をする背景

自治体がAIの導入を進める背景には、自治体運営において以下のような課題があったことが挙げられます。

 

少子高齢化による人手不足

少子高齢化が進む日本では、自治体職員の減少が深刻な課題となっています。AIを活用することで、事務作業の自動化や効率化を図り、人手不足の解消や業務の質の向上を目指しています。

 

行政サービスの高度化・多様化

行政サービスは、市民のニーズに合わせて高度化・多様化が求められています。AIを活用することで、市民のニーズを的確に把握したり、新たなサービスを提供することが可能になります。

 

行政のデジタル化推進

政府は、2025年までに行政のデジタル化を推進する「デジタル・ガバメント改革」を進めています。AIを活用することで、行政のデジタル化を加速させ、市民の利便性向上や行政の効率化を図っています。

 

自治体のAI導入事例

自治体のAI導入事例は、大きく分けて以下の3つの分野に分けられます。

 

業務効率化
・チャットボットの導入による、市民からの問い合わせ対応の効率化
・画像認識技術の活用による、行政手続きの簡略化
・データ解析技術の活用による、予算編成の効率化

 

住民サービス向上
・大量のデータを素早く処理できるため、住民へのサービス提供が迅速になる
・AIは24時間365日稼働するため、窓口の営業時間外でも住民への支援が可能
・AIによる業務自動化により、人為的ミスを減らし正確な情報提供が可能となる

 

地域課題の解決
・AIの高速なデータ分析により、地域課題の把握や分析が迅速かつ効率的に行える
・AIはパターンを見つけ出し、予測を行う能力があるため、将来の課題にも対応可能
・AIによるデータ分析に基づいた正確な予測と効果的な課題解決策を立案

 

業務効率化のAI導入事例

自治体ではAIを活用したチャットボットが普及しています。チャットボットは、24時間365日、市民からの問い合わせに対応できるため、市民の利便性を向上させることができます。また、チャットボットは、AIによって自動で回答するため、職員の業務を効率化することができます。さらに、チャットボットは、市民のニーズに合わせてカスタマイズできるため、市民の利便性をさらに高めることができます。

秋田県:チャットボット「農地転用許可制度について」

https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/69307

埼玉県:チャットボット「AI救急相談」

https://www.pref.saitama.lg.jp/a0703/aikyukyu.html

 

住民サービス向上のAI導入事例

京都府京都市:AIによる観光情報の提供

京都府京都市では、AIを活用して観光情報を提供しています。この取り組みでは、観光客のスマートフォンの位置情報や移動履歴をAIで分析し、観光客の興味や関心に合った情報を提供しています。これにより、観光客はより効率的に京都観光を楽しむことができるようになります。

https://www.kyokanko.or.jp/news/20191031_1/

 

千葉県:MCR for Citizens

千葉市の既存の取組(ちばレポ)の発展版であるMy City Reportの機能である、道路管理者向けアプリMCR for Road Managersにおいて、大学が所有するAI技術を使っています。これは複数自治体の使用を前提としたもので車載スマートフォンで路面を撮影し、AIが道路損傷を抽出するというもの。ちばレポで集まったデータの活用方法について東京大学と共同研究する中で、「ちばレポの写真をAIに分析させることで道路の損傷状況を判定できそうだ」という成果を得られたことが、道路管理者向けアプリを連携して構築するきっかけとなりました。

https://www.mycityreport.jp/governments/for-roadmanagers

 

地域課題解決のAI導入事例

愛知県豊田市:AIを活用した漏水箇所検知

愛知県豊田市は、衛星データをAIで解析するシステムを活用して水道管の漏水調査を行いました。市内556区域を調査したところ、154区域の259カ所で漏水を発見。これまでの調査方法だと約5年かかる作業を約7カ月に大幅に削減することができた。

衛星画像の解析による水道管の水漏れを検知

沖縄県那覇市:AIによる特定健診受診率向上システム

沖縄県那覇市では、AIを活用した高齢者の見守りシステムを導入しています。このシステムは、高齢者の生活状況をセンサーで監視し、異常を検知した場合にAIが自動で家族に連絡します。これにより、高齢者の安心・安全な生活の実現につながっています。

RPA等実証実験のとりまとめ

 

自治体のAI導入における今後の課題

自治体のAI導入が進む一方で、以下の課題も指摘されています。

 

●技術的課題

AIの技術は日々進化しており、自治体は常に最新の技術を把握し、導入に対応する必要があります。

 

●人材育成の課題

AIを活用するためには、AIの基礎知識や活用方法を理解した人材が必要です。自治体は、職員のAIに関する人材育成を進めていく必要があります。

 

●倫理的・社会的課題

AIの導入には、個人情報の保護や偏見の排除などの倫理的・社会的課題も伴います。自治体は、これらの課題への対応も検討する必要があります。

 

今後も自治体のAI導入はさらに進んでいくことが予想されます。同時に指摘される課題を解決し、技術、人材、倫理全ての面をクリアしたAIの活用方法を確立していくことが重要になります。

関連:自治体AI導入の課題についてはこちらの記事で紹介しています

 

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